作品テキスト
老人の足取りは重い。ひとりなら、座り込んでしまっただろう。しかし小馬が先に行き
、振り返る。早く来いと、遠ざかりながら呼んでいる。杖がその手を支える。立てと、
もう一度突けと、地を受けてくれる。海の上に小さな舟が一艘。こちらだと、方角を示
しながら水平線をたどる。ついて来いと、先に道をひらいて行く。老人は、ひとりで歩
いていると思っていた。けれど、そうではなかった。馬が呼び、杖が起こし、舟が道を
ひらく。風景のすべてが、老人を連れて行っていた。
主要文脈
邊時志は、済州の風土を単なる背景ではなく、存在の条件として描いた韓国の近現代画家です。孤独、待つこと、風、枯れ草の色を通して、地域性と世界性を結ぶ韓国モダニズムのグローカルな美学を築きました。
画家済州日本ソウル秘苑(昌徳宮後苑)近代現代芸術美術
