The Byun Shi-Ji Atlas WORKS · FŪDO · LANGUAGES
Skip to content
← 代表作品 · Original artwork page
BYUN SHI-JI · FŪDO 091

回想

Recollection

1988 · Jeju, middle period

Byun Shi-Ji (변시지), Recollection, 1988, painting from the middle Jeju period, shaped by wind and dried-grass colour.

作品テキスト

あの馬は、いつもそこにいた。
石垣のそばに、茅葺きの家のそばに、
私が生まれる前から
そこにいたかのように。
畑を耕すときは並んで歩き、
子どもが泣けば、
振り向いて見た。
雨が降れば、
同じ軒の下で息をしていた。
一度も抱いたことがない。
一度も名を呼んだことがない。
それなのに、ふしぎだ。
こんなに痛むとは、思わなかった。
あまりに毎日見ていたので、
見ているということに気づかなかった。
あまりに近くにいたので、
いるということに気づかなかった。
だから、描こうとすると、
筆が止まるのだ。
濃く描けば、
それは私の知る馬ではない。
描かなければ、
その馬は、この世に
いなかったことになる。
長くためらって、
かすかに描いた。
背景の中に、しみ入るように、
いるのでもなく、

いないのでもなく、
ちょうどそれだけ。
それでいい。
記憶とは、もともとそういう濃度だ。
もっとも愛したものが、
もっとも淡く残る。
もっとも長くそばにいたものが、
まっさきに輪郭を失う。
消したのではない。
馬が自ら、
私の中へ歩み入ってきたのだ。
眼から、
あまりに深く入ってきて、
よく見えない。
いまは、私が息をするたびに、
その馬も息をする。

主要文脈

邊時志は、済州の風土を単なる背景ではなく、存在の条件として描いた韓国の近現代画家です。孤独、待つこと、風、枯れ草の色を通して、地域性と世界性を結ぶ韓国モダニズムのグローカルな美学を築きました。

画家済州日本ソウル秘苑(昌徳宮後苑)近代現代芸術美術