作品/FŪDO 091
回想
Recollection
基本情報
| 識別番号 | FŪDO 091 |
|---|---|
| 題名 | 回想회상Recollection |
| 制作年 | 1988 |
作品テキスト
文 Byun Joung Hoon
あの馬は、いつもそこにいた。石垣のそばに、茅葺きの家のそばに、私が生まれる前からそこにいたかのように。畑を耕すときは並んで歩き、子どもが泣けば、振り向いて見た。雨が降れば、同じ軒の下で息をしていた。一度も抱いたことがない。一度も名を呼んだことがない。それなのに、ふしぎだ。こんなに痛むとは、思わなかった。あまりに毎日見ていたので、見ているということに気づかなかった。あまりに近くにいたので、いるということに気づかなかった。だから、描こうとすると、筆が止まるのだ。濃く描けば、それは私の知る馬ではない。描かなければ、その馬は、この世にいなかったことになる。長くためらって、かすかに描いた。背景の中に、しみ入るように、いるのでもなく、いないのでもなく、ちょうどそれだけ。それでいい。記憶とは、もともとそういう濃度だ。もっとも愛したものが、もっとも淡く残る。もっとも長くそばにいたものが、まっさきに輪郭を失う。消したのではない。馬が自ら、私の中へ歩み入ってきたのだ。眼から、あまりに深く入ってきて、よく見えない。いまは、私が息をするたびに、その馬も息をする。
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